全国裏探訪取材班は、福岡県久留米市に来ている。現在は「原古賀町」という名前の地名になっているが、ここにはかつて存在していた遊郭跡である「桜町遊郭」を訪ねた。
表に出ると謎の居酒屋だった。既に閉店しており、店の名前もよくわからない。それにしても増改築を繰り返してなんとも不格好な建物である。
正面から右側を見てみると、これもまた料亭らしき佇まいが見え、2軒分を1軒でやっていたほどの規模のようだ。どうやら、結構大きな貸座敷だったに違いない。ここがもしかして教育委員会に貴重な記録が残っている「福寿楼」とういう話だ・・・
周辺を歩いてみると、時代が少し合わない古びた和風料理店があった。
「鰻料理 ふぢ井」
日本の風俗街には料亭や朝鮮系の焼き肉といったお店がつきものだが、他にも高級な食材を出すお店も同じ区画や町に存在もする。ここだ精(力)が付くうなぎなのか。風俗は道徳上悪だと認識しておきながら、客足を誘い、こういったお店が繁盛する可能性を秘めていた。
ここで、熱心な読者より、追加の情報を得たので追記する。昔ここで住んでいた読者によると、昔このうなぎ屋の隣には、2階建ての下宿のような古い木
裏路地に入る。ちなみにこの桜町遊郭は1897年に開業したようだ。開業時は33、4軒程度だったが、軍の規模が拡大すると共に需要が増した。1930年(昭和5年)発刊の「全国遊郭案内」によると最盛期は23軒あったそうだ。
ちなみに独自取材によって得た情報によると、軍人を相手にしてきたなどという公の記録は存在しない。しかしながら、軍人による遊女殺害事件が起きてることや軍の駐在のタイミングや異動のタイミングと重なって桜町遊郭が成長したことを考慮すると、間違いだろうな。ガッテンガッテン。
ここで働く遊女達は様々なところから身売りされてきたため、「前借金」と呼ばれるつまり身売り代金を背負わせれてきた。店側と遊女で折半だったらしいが、結局、毎月の飲食代や利子を差し引くと、残る金は微々たるものでその金も前借金の返済に当てていたのだとか。ちなみに記録上完済者は0だったそうだ。正に地獄の世界であろう。
借金の額は今でいうところ、260万~850万円とおよそ車が買える程度である。無論これらの値段は年齢や健康状態や容姿などで変わる。自分の体に売買の値札をつけられるなど、現代では到底受け入れられにくいのだが、転職する際の年収だと思うとどうだろうか。
たまたま通りすがりの現地民にこの辺はどんな街だったのか聞いてみる。「昔はね、大きな声では言えないけどこの辺一体風俗街だったよ。大きな声で言えないけどね・・・」どんな街だったか伺うも、あんまり言えないと一言残し、去っていった。何かもっと卑しいことでもあるのだろうか。
さらに通りを歩くとタクシーの事務所があった。これも近くに繁華街がある証拠でもある。建物は時代が異なるが、だいたい繁華街付近は利用者が多い為、こういった事務所は多い。今では運転代行のサービスと変化しているが、本質的には何も変わらない。
まあ、さすが修羅の国といったところか。この辺は道仁会や少し離れると浪川会や九州誠道会といったかなり狡猾な暴力団が存在するため、福岡の特定の地区ではこういったシールを貼っている夜の街や関連の施設は多いのも見どころ。
近くを歩くと潰れた個人医院があった。看板もなく、住んでいる人もいない。熱心な読者は見飽きているかもしれないが、風俗と医院は大抵セットになっている。理由はお察しの通り。では次回は貴重な証言から現存する物件へと足を運びます。
これも熱心な読者からのタレコミなのだが、病院の隣に庭の名残のある駐車場のような空き地には、かつて鉄筋コンクリート造りの白壁の家が建っおり、1974年くらいは病院の医師の家だったようだ。当時は立派な内装で、床の間や洋風のダイニング、大きく車2台ほどが停められる屋内ガレージ、庭や池も有り狭いながら立派な日本庭園があったようだ。
儲けたお金でコンクリートの家と日本庭園と2台入る屋内ガレージ床の間や洋風のダイニングを備えた華やかなな生活と、一方で車が購入できるほどの借金を抱え、一生返済できない詰んだ生活のあとが入り混じっていたようだ。さっきの少女の話と言い、現代でいうところの「親ガチャ」と言ったところだろうか。人生とは非情である。
さらに証言を追記すると、病院の至近には、上記のような2階建てで4畳半のひと間6戸の日当たりの悪いアパートがあり、病院の看護婦の寮だったのだという。ただ後年その物件は、夜水商売をしている女性の寮のような状態になっていて、まず住人と顔を合わすことはなかったらしい。そして、その女性達の所へ毎晩男性が。養豚場から豚を運ぶトラックに乗ってきて玄関先に駐車。そのことに、迷惑を被った住人が文句を言っても男たちはニヤニヤしたいたらしく、業を煮やして警察を呼んだら、相手はヤクザで警察官が謝る始末だったらしい。なるほど。時代のディティールが鮮明によみがえってくる。
では次回は貴重な証言から現存する物件へと足を運びます。
次回もご覧くださいませ。
(2020)
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