全国裏探訪取材班は、観光都市小樽に来ている。ここは北海道旅行には欠かせない観光地になっているらしいが、観光都市になる前は水産や海運で栄えた町なのだという。なんでも100年ほど前は札幌と双璧を成す都市だったというのだ。
「小樽市」
たかだか12万人の小樽市が200万人に迫る札幌市と双璧?何かの冗談だろと言われるが実際本当だったのでしたかがない。
「北海製罐株式会社小樽工場」
そんな当時、小樽の発展に寄与していたのがこの北海製罐株式会社小樽工場と言う企業。製罐と言うくらいなんで“缶”関連の一切の業務を行っていたのだろうか。
で、その北海製罐株式会社だが戦前「蟹工船」を執筆した小林多喜二の名作「工場細胞」の舞台なのだという。この作品内でこの工場は「H・S工場」(北海製罐工場)として登場してくる。
「北海製罐小樽工場第3倉庫」
作品内でもこの工場の規模についての記述が所々に記載がある。作品を引用しながら見て行こう。
「―埋立地になって居り、その一帯に運河が鑿(ほ)られている。運河の水は油や煤煙を浮かべたまゝ澱(よど)んでいた。発動機船や鰈(かれい)のような平らべったい艀(はしけ)が、水門の橋梁の下をくゞって、運河を出たり入ったりする。」
「艀」
少し分かり難いかもしれないが、この運河に浮かぶ船は“艀”と言う。この艀は小樽港に停泊する貨物船から荷物を積み下ろしし運河迄持ち込むための船だ。言わば貨物船と陸を行ったり来たりするわけだ。現存する艀はすでにこの艀一隻になってしまった。
この艀、工場細胞作品中では鰈のような平べったい船とたとえられている。ただ、既に運用されていないのか錆びだらけになってしまっている。工場細胞を書かれた当時はまだ運河で現役だったのだろうか。ちなみにこの艀は今年中に解体されるとか・・
さて引用を続ける。「―「H・S工場」はその一角に超弩級艦のような灰色の図体を据えていた。それは全く軍艦を思わせた。罐は製品倉庫から運河の岸壁で、そのまゝ荷役が出来るようになっていた。―」
なるほど。確かにこうしてみるとなかなかの迫力があるように見える。確かに超弩級戦艦の威容だ。この北海製罐小樽工場第3倉庫だけなら全長100m強だが、北海製罐小樽工場の全長は運河を跨いで260mほどあり戦艦大和並みだ。
さて物件の具体的な大きさを見て行きましょうか。この北海製罐小樽工場第3倉庫は長さ約102m、幅約17m、高さは4階建てだが一般のマンションに換算すれば7階建てくらいの高さはあるだろうか。
運河が微妙なR(アール)を描いているのでその曲面に沿うように、少し弧を描くように物件が建てられているのが分かるだろうか。
さて次回も小林多喜二「工場細胞」を読み返しながら「北海製罐小樽工場第3倉庫」を見て行こう。
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(2020)